■ヤシは携帯保存食品の元祖

海流に乗って漂流し、亜熱帯から熱帯に約3500種が自生するヤシ。
食品だけでなく繊維や家具として、さらに種類によって蚊よけや下痢止め、
吹き矢の筒、飲料やペンキの赤の染料として幅広く利用されてきた
生活になくてはならないものだ。
大航海時代の人間が食料として持ち運んだため、
世界中にその恩恵を広めることになった。

中でも海流に運ばれる実として有名なのがココヤシだ。
フィリピンやインドネシアの島々では、海岸近くに生える背の高いココヤシが、
南国らしい景観を作っている。
ココヤシのココとはポルトガル語で猿の意味で、
猿の顔と似ているから猿のナッツというわけだ。

■捨てるところなしの優れもの

多くの果物で食べる部分は、ヤシの実では繊維が詰まって食べられない。
しかしこの繊維、実は台所にある亀の子タワシの材料として有名だ。
繊維の内側には固い殻(内果皮)を持つ種子がある。
中には水が溜まり、内側にゼリー状の層(胚乳)がつく。
胚乳はだんだん白く固まりやがて完熟し、これが熱帯料理に欠かせない
ココナツミルクの原料だ。
胚乳を乾かしたものはコプラと呼ばれ、菓子に使われたり、
食用油やせっけんの原料となるヤシ油を作る。
残カスは家畜のえさ、種子の殻は細工品として利用される。

ココヤシは、1本で1年間に50個以上の実が採れ、寿命は約60年。
毎年多くの恵みを与えてくれる。
工業製品や西洋文化に押されぎみだが、エコロジー指向の21世紀、
天然素材として見直されている。

●内果皮
猿の顔に似ている内果皮。
球状の固い殻は、プラスティックが出回る以前は、あらゆる容器として利用されていた。
刃物で細工するにはほどよい堅さで、貯金箱や菓子入れ、シャモジや楽器として活躍。
最近では装飾用のランプやアクセサリーなどにも加工されている。
燃やすと質のよい活性炭ができ、炭ブームの一角を支えている。
吸着力に優れた活性剤は脱臭剤にも。

●中果皮
超ロングセラー商品だった亀の子たわしをはじめ、ロープや泥落とし用マットなどは、
新しい工業素材に押されて姿を消しつつある。
しかし、最近の天然素材の見直しで通気性のよさなどが再認識され、
畳や座布団などに使われている。
また水はけと通気性がよいのでガーデニンググッズにも最適。
カムバック素材として注目を集めている。
水持ち・水はけ・通気性がよく栽培土にも向いている。
環境保護の視点からメルセデス・ベンツのシートやパネルにも使用。

●胚乳
若く柔らかいときはそのまま食用に、固くなったものは、
かきとり砕いて水を加えるとココナツミルクに変身する。
乾燥させれば独特の食感と香りを発し、ココナツファイバーとして
菓子の材料などに使われる。
日本で流行したナタデココはココナツのゼリーというところだろう。
胚乳から採れるヤシ油は、食用油やマーガリン、石鹸にも姿を変える。

ココナツミルクを原料としたプリン
洗剤の界面活性剤の原料はヤシ油
ココヤシ100%の天然ヤシの実せっけん
おなじみのシャンプーにも

●果水
頭を切ったヤシの実にストローをさして飲むのがこの果水。
無色透明でほんのりと甘いココナツジュースは、胃への吸収が優れている。
そのため天然のスポーツドリンクとして人々の喉を潤してきた。
また、この果水は植物の組織培養のときにも使われるが、
これは細胞の成長を促す作用があるためで、身体にいいのも納得。

輸入食材店にはココナツジュースも
生のジュースは見た目もトロビカル

●庶民を潤すヤシの発酵食品
果実だけでなく注目したいのがヤシの樹液。樹に壺を掛けておくだけで、
花芽を切った先から1日に2〜3リットルの樹液が採れる。
すぐ発酵をはじめ、一夜でトディと呼ばれる炭酸味の甘酸っぱい濁り酒ができあがる。
当然賞味期間は短い。流通しているのはトディを蒸留したアラックで、
ウィスキーとブランデーの中間のような味わいだ。
もうひとつ樹液の加工品として忘れてならないのがヤシ糖である。
樹液を煮詰めたもので、砂糖の代用品として庶民に愛されてきた。

ココヤシのアラック
パルミラヤシのヤシ糖


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